古谷家・播磨屋
児島郡吹上村
倉敷市史第十一冊561頁に載っているこの家の墓誌と略系を目にし、中島三郎四郎宣光(妻槙は生坂間野氏)の孫娘がこの家に嫁いでいることを知ってから、お墓を確認したいと思っていました。
槙は私の六代前茂利治貞本の実姉です。
ある日、下津井荻野家のページを読まれた岡本H氏からメールが届きました。岡本家は荻野の親族で、親戚関係について詳しい説明がありました。
私の大叔母が嫁いでいる溝手家と荻野家の関係を知り、図書館で「下津井と荻野家物語」を見つけたので、私的な覚えのつもりで書いていましたので、墓地の場所をお聞きして確認に行くことにしました。
下津井吹上の弘泉寺下から墓地山を歩くルートでしたが、荻野家の墓を認知する直前に古い立派な墓碑群があるのに気付きました(上写真)。
倉敷市史には文蔵を初代と書いていますが、明治の頃に作成された本播磨屋墓籍台帳によると、初代は喜太郎で小屋野喜左衛門長男とあります。喜左衛門の家から分れて新たに家を興したことがわかります。
味野の塩田地主野崎家と同族で、味野が浅瀬になって回船業が出来なくなったので下津井に移住してきたと口伝しています。
古谷は「こや」と発音し、野崎家の本姓昆陽野(こやの、こや)から同音異字を使った苗字のようです。下記系図のように古谷野を名乗っている家もあります。
味野にはいまも古谷姓が多く、こちらは「ふるたに」と発音するようです。
四代喜代八、五代喜太郎昌忠(善太郎昌教)ともに妻を味野村新屋荻野家から迎えていますが、昌忠は若くして亡くなったので、その妻貞子は浅口郡鴨方村の高戸忠順次男安次郎を後夫に迎え、この間に直寛が生まれます。しかし、貞子もまた相次いで早歿したので、安次郎は備中五名村太田六郎長女を後妻に迎え、この間に資生が生まれています。和一郎も二十三才で亡くなっていますので、中島氏からの血脈はここで途絶えました。
古谷H氏所蔵文書中には、野崎武左衛門が安次郎忠文宛に書いた金銭借用証書が多数見られます。何れも數百両単位(現在の金で一千万円くらい)のものですから、塩田王といわれて出世した武左衛門もかなりなお金を借りていたことが判ります。古谷家のこの莫大な資産は北前船の運用によってもたらされたようです。武左衛門の塩田、新田開発の資本が古谷家の通商からもたらされていたともいえるでしょう。
明治になって古谷家の運輸業も衰退をはじめ、孫喜八郎は四国の鉱山開発に着手しますが、喜八郎の死去に伴って経営破綻、一家は関西から関東へと移住しています。
播磨屋は地元の歴史を知る人の頭に残っていますが、冒頭の墓地を結びつけて理解している人はいないようです。
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喜太郎 ――文蔵 ――+――喜八郎昌盈――+――喜代八 ――+――善太郎昌忠 ――二男子 安永6 安永9 | 文政7 | 文化9 | 文政12 夭 室 室昆陽野氏 | 室昆陽野氏 | 室荻野氏 | 室荻野氏 | | | +――ふき +――女 +==安次郎忠文――+――和一郎直寛 | 安永3 | 夭 高戸氏 | 安政3 | | 慶應2 | +――里か +――喜世 室荻野氏 +――八重 寛政5 | 正則妻 室太田氏 | 天保8 | | +――美須 +――喜八郎資生――+――ヒサ | 野崎武左衛門妻 明治29 | 文久2 | 室小西氏 | +――艶 室小西氏 +――久太郎 能勢恵信妻 | 慶應5 | +――女 | 慶應3 | +――喜八郎 ――+ | 大正10 | | 室太田氏 | | 室飛田氏 | | | +――三四郎 | | | | | +――濱 | | 荘辰三郎妻 | | | +――五市 | | 明治5 | | | +――太一郎 | | 明治6 | | | +――杲吉 | | 昭和11 | | | +――春 | 昭和21 | | +――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――+ | +――静 | | +――秀 | 近藤真一妻 | +――真 | 菅野真湛妻 | +――啓 | 永井得一妻 | +――喜太郎 ――+――H | 昭和63 | | 室石氏 | 室三木氏 | | +――満 +――N | 大野真一妻 | +――安次郎 | | +――平吉 | 大正12 | +――甫造 明治42
喜八郎昌盈の墓碑には「小屋野」、同妻の墓碑には「古屋野」、安次郎忠文は「古谷」、昭和三十八年六月十二代喜太郎建之という古谷家歴代之墓には本播磨屋という花筒が建てられています。
いくつかの分家があったようです。
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古谷野 新助 ――新七郎 ==新助正則 ――+――男 寛政2 文化13 鎌田氏 | 室 室長谷氏 天保12 | 室昌盈二女 +――辰之丞? | 文政8 | +――女 | | +==新三郎英幸――+――女 能勢氏 | 明治14 | 室溝手氏 +――歌子 ――多賀子 | 文久2 文久2 | +――男 | | +――男 | | +==半次郎 #――+――誠一郎 | 高戸氏 | 安政4 | | | 室英幸三女 +――新三郎 ――+――孝太郎 ――+――寿喜男 | 大正9 | 明治14 | 大正7 +――理太郎 室太田氏 | 室 | | 天保13 | +――武雄 | +――茂登 昭和3 +――源三郎 | 野崎茂平妻 嘉永1 | +――英太郎 | 大正3 | +――コウ | | +――恵津 | 戸田基治妻 | +――末男 ――都志江 昭和36 池田公二妻 室
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喜右衛門 ――岩蔵忠利――+――女 弘化3 明治10 | 室 | +――永 | 永山久平妻 | +――竹松 ――+――藤吉郎 昭和7 | 大正11 室 | 室永田氏 | +――集吉 ――+――淳 昭和2 | 十川家へ 室 | 室 +――弘 ――+――M | 平成14 | | 室 | | | +――寿子 +――T 大正15 | | +――H
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